HOME > 授業科目 > 生物 > 結露は意外なところで起こっている


自然に近い家の授業 > 授業科目 > 生物 > 結露は意外なところで起こっている


結露は意外なところに起こっている

 日ごろ私たちが目にしている結露といえば、冬場サッシのガラス面に水滴がボトボト落ちる様子を見かけますが、家庭内では結露している部分はまだ他にたくさん見えないところで起こっています。見えるところが一番気になるのでサッシの水滴が悪者になりがちなのですが、これは大きな間違いです。水滴がボトボト落ちてサッシの枠が濡れ、腐ってくるところまでいくと重症ですが、これよりももっと重要視しなければならないところがあります。

それは外部から見ることが出来ない壁の中です。近年の建物は高気密・高断熱というのが当たり前になってきているので、空気の流通が非常に悪く、外部と内部の空気の流通は換気に頼るしかありません。

建築基準法改正で各部屋に常時換気扇を取り付けるよう義務付けられましたが、部屋の中の空気は換気しますが、壁の中までは換気しづらく、根本的な解決になっていません。

 そして一戸建て住宅や特にマンションは外壁部に防水効果のあるアクリル系塗料や吹付、防水材の塗布、樹脂系接着剤のような化学物質を使用しているので外壁面全体がコーティングされており、内部の空気と外部の空気の流通ができません。マンションの陸屋根の場合も同様にアスファルト系やシートで完全防水しますので、空気の流通はできません。しかも、使用される材料も、新建材が多く用いられ、昔の木造の家屋に比べ、吸湿性が悪くなってきているのも一因と思われます。

 そこで部屋の湿気が壁面に付着し、これが結露となって壁の中を湿気の溜まり場にしてしまいます。そこに適度な温度になるとカビが発生し、見えない部分にこびりつき、室内の空気がカビ菌で汚染されているわけです。最近の内装は石こうボートに壁紙をよく使用していますが、この石こうボードの裏などにカビはよく存在します。リフォーム工事などで壁を解体するとよく黒カビが見えることがあります。

 外部の壁なども同様にカビが発生する場合があります。これは無機質の壁材に見えて意外と塗料や吹付材に有機質系の添加剤を混入されていることがあるからです。カビは特に有機物に生えやすいのです。

主なカビの種類

カビの種類は数万種にのぼるとされています。家屋に発生するカビは約300種が確認されています。

「黒カビ」

 壁内によく発生するカビとして、「クラドスポリウム」というカビがあります。クラドスポリウムは、俗に「黒カビ」とも呼ばれ、特に、浴室やキッチンなどのタイルの目地などに黒く斑点状に増殖します。カビの胞子はわずかな気流で飛散してしまいますので、部屋のタンスの裏や、食品などにも着床して増えていきます。クラドスポリウムは乾燥や低温、防カビ材にも比較的強いと言われています。アレルゲンとしてアレルギー性疾患の原因にもなり、カビの悪玉として嫌われています。

 住宅内のカビの数量の一例をあげますと1立方メートル中、浴室で1400、居室で平均660で外気の真菌数約80と比べると平均で8倍に及びます。アレルギー体質をもっている人が1日8時間暮せばその人は1500個の胞子に自分の鼻や気管支の粘膜をさらすことになり、抗体がたくさん作られて発病しやすくなりますから保健上放置しておくわけにはいかないでしょう。

 カビが原因でかかる病気は①真菌感染症②真菌アレルギー症③真菌中毒症の3つがあり、特にカビが原因となるアレルギー疾患として気管支喘息、過敏性肺炎、鼻アレルギーなどがあります。日本人でアレルギー体質かアレルギー予備軍を含めると人口の60%の方が既にもっておられます。

住まいにおける結露やカビは住み手にも注意が必要です

 冬の暮し方で特に注意が必要なのは、閉め切った部屋で加湿器でやたらに加湿したり、家具を北側や妻壁に接して置いたり、部屋や押入れを長い間閉め切ったままにするといったことはできるだけ避けましょう。家具は壁から5cmくらいは空け、家具底には垂木を2本挟んだり、押入れの床にはスノコなどを敷き空気を流通できる状態が好ましいでしょう。

カビの防除法

 次亜塩素酸ナトリウムを水で薄めて約0.5%溶液とし、それを浸したスポンジでこすり、カビを拭き取ります。最後に消毒用アルコールを刷毛で塗ります。木部の場合の防除法は結構大変で、木の持っている独特の色合いを損なわないようにしながら、カビを退治する必要があるのですが、この場合は蓚酸もしくはクエン酸を使用します。

新築・リフォーム時のポイント

 以上のように結露とカビはとても緊密な関係で住宅に可能性として秘めています。これらを新築する時やリフォームする時に解決するような計画をする必要があります。

 ハウスメーカーでは最近抗菌・防カビ入りの建材を使用します。これは当然のことでしょうが、防カビ材には化学物質で処理しようという考え方です。また、抗菌建材で室内を覆いますと、人間の体に必要な善玉菌まで殺すことになり、アレルギー体質の方が増える原因にもなります。

 カビは実験の結果からphが10を超えるとカビの繁殖力が殆ど無くなることが知られており、しっくいのアルカリ性の性質が強力な防カビ効果になります。しっくいは昔からお城やお寺の壁に塗られている白い壁で他に調湿効果も非常に優れています。これを外壁、内壁に塗ると結露・カビの発生を抑えられます。しかも、外壁と内壁を空気の流通できるよう防水をしません。外壁側には撥水対策としてしっくいに柿渋と植物油を混入します。コンクリート造の建物もこれで壁内の水分も乾燥できます。